「患者様の声」を自院のサイトに載せられないのは、書き方が下品だからではありません。厚生労働省令が、体験談そのものを禁止しているからです。しかもこのルールは、2026年(令和8年)3月30日に、3つの文書が同時に改正されたばかりです。原文から説明します。
同じシリーズに 接骨院・整骨院・鍼灸院の回、整体・カイロ・リラクゼーションの回、エステ・脱毛サロンの回があります。どれに当てはまるか迷う場合は 業種別ガイドの一覧 から選べます。
読んだあとの点検には 院内チェックシート10項目(印刷できます) をどうぞ。
改正されたのは、①医療広告等ガイドライン本体 ②そのQ&A ③ウェブサイト等の事例解説書(第6版)の3文書です。
つまり「去年つくったホームページのまま」だと、根拠にしている文書が1世代前になっています。あわてて全部作り直す必要はありませんが、下の5つだけは今日確認しておいてください。
※日付(令和8年3月30日最終改正)は、ガイドライン本体PDFの表紙で確認しています。Q&Aと事例解説書の版数は、学会の周知ページによる情報です(出典は最後に置いています)。
最初に、いちばん大事なこと
歯科・美容クリニックの広告でいちばん多い勘違いは、「どこまで盛ってよいか」という問題だと思ってしまうことです。
実際にはもう一段前に、「そもそも書いてよい項目が、法律で決まっている」という構造があります。
医療の広告は「これを書いてはいけない」という引き算ではなく、「これなら書いてよい」という足し算で作られています。ガイドラインの言葉では、広告可能な事項は「客観的な評価が可能であり、かつ事後の検証が可能な事項に限られる」とされています。
だから「日本一」も「効果が高くおすすめ」も、盛っているからではなくあとから誰も検証できないから載せられません。禁止ワードを暗記するより、この向きを1回つかむほうが早く、あとで自分の身を守ります。
同じ「美容」でも、かかる法律が違います。ここを間違えたまま文章を直しても、直す先が違うので意味がありません。
| お店の種類 | 主にかかるルール | この記事の当てはまり |
|---|---|---|
| 歯科医院・歯科クリニック | 医療法(第6条の5ほか)+医療法施行規則第1条の9+医療広告等ガイドライン | そのまま当てはまります |
| 美容クリニック・美容皮膚科・美容外科(医師がいる) | 同上。さらに自由診療が中心なので、費用とリスクの説明義務が重くなります | そのまま当てはまります。とくに3〜5番 |
| エステ・脱毛サロン(医師がいない) | 医療法ではなく、景品表示法・特定商取引法・薬機法・医師法 | エステ・脱毛サロンの回をお読みください |
| 歯科技工所・矯正の相談窓口など、医療機関ではない事業者 | 景品表示法など。ただし特定の医院へ誘導すると医療広告の側に入ることがあります | 2番の「誘引性」を読んでください |
以前は「ウェブサイトは、患者さんが自分で探して見に来るものだから広告ではない」と整理されていました。今は違います。ガイドラインは、広告に当たるかどうかを次の3つで判断すると書いています。
院名が出ていて、来てほしいと思って書いていれば、それは広告です。ホームページも、ブログも、LINEも、院が出しているSNSも、全部この中に入ります。
そして今回の改正版には、体験談についてこう書き足されています。
「広告に当たる」→「だから禁止」まで、1文でつながっています。ここが今回いちばん実務に効く部分です。
NG 1医療法施行規則 第1条の9 第1号(体験談の禁止)
「患者様の声」「治療を受けた方の感想」を、自院のサイトに載せる
なぜ:感想は本人の主観です。ガイドラインは「個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがある」としています。さらに「体験談の記述内容が、広告が可能な範囲であっても、広告は認められない」とまで書いてあります。つまり言い方をおとなしくしても通りません。載せる場所を変えるのではなく、感想をやめて説明にするのが唯一の道です。
NG 2医療法施行規則 第1条の9 第2号(ビフォーアフター写真)
治療前・治療後の写真を、写真だけ並べて載せる
なぜ:禁止されているのは「ビフォーアフターを載せること」ではなく、「誤認させるおそれがある」まま載せることです。原文は、詳細な説明を付けた場合はこれに当たらないとはっきり書いています。
ただし逃げ道も潰されていて、「リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用してはならない」とあります。※印で小さく書いて別ページに飛ばす形は、名指しでダメと書かれています。
NG 3医療法第6条の6・広告告示(広告できる診療科名)
「審美歯科」「インプラント科」を、診療科名として看板やサイトに出す
なぜ:歯科で広告できる診療科名は「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」の4つです。ガイドラインは「◎歯科に関係する名称『インプラント科』、『審美歯科』など」を、法令に根拠のない名称として明記しています。しかも「これら法令に根拠のない名称と診療科名とを組み合わせた場合であっても、その広告は認められない」とあります。
やっている治療を隠す必要はありません。「科」として掲げるのをやめて、本文で説明する形に変えるのが基本の直し方です。
ただし、インプラントや審美目的の治療は多くが自由診療にあたります。本文で説明するときは、次の4章「限定解除」の①〜④を満たした書き方にしてください(費用の幅・期間・回数・主なリスクまで書く、ということです)。
同じ理由で「専門外来」という書き方も、広告可能な診療科名と誤認させるとして認められていません(第3-1の(5))。
NG 4医療広告等ガイドライン 第3-1の(8)(品位を損ねる内容の広告)
「今なら◯円」「50%オフ」「◯◯し放題」で価格を前に出す
なぜ:これは景品表示法ではなく、医療広告のガイドラインに具体例として名指しで並んでいます。「他店より安い」と言ったからではなく、費用を強調して患者を誘うこと自体が、医療の広告としてふさわしくないという考え方です。
ここは正直、集客したい院ほど痛い項目です。ただ実務的には、金額の透明さは値引きより強いです。総額と回数を先に出す院のほうが、問い合わせの質が上がります。
NG 5医療広告等ガイドライン 第5(限定解除の追加要件)
海外製の薬・機器を使う自由診療なのに、「未承認です」と書いていない
なぜ:自由診療でウェブサイトに詳しく書けるのは「限定解除」という仕組みのおかげですが、未承認の薬・機器を使う場合は、限定解除の要件として上の内容まで書く必要があるとガイドラインに定められています。
逆に言うと、ここを書いていないと、そのページ全体が「広告可能事項以外を広告している」状態になり得ます。1行の書き忘れで、ページごと危うくなるのがこの項目です。
おまけ言ってしまいがちな一言
誇大広告として、原文に例示されている言い方
「絶対」「必ず」を避けていても、比較の相手を書かない安全アピールと不安の強調は引っかかります。安全性を伝えたいときは、件数・使用している機器・体制など、あとから確認できる事実に置き換えてください。
美容クリニックのサイトが自由診療の内容を詳しく書けるのは、「広告可能事項の限定解除」という仕組みがあるからです。
限定解除=「本来は書けない項目でも、条件を全部満たしたページなら書いてよい」という例外の扱いのことです。名前が硬いだけで、意味はこれだけです。
ガイドラインは、次の①〜④をすべて満たしたときに限るとしています(③④は自由診療の情報を出す場合)。
令和7年法律第87号(医療法等の一部を改正する法律)による見直しを受けて、今回のガイドラインには「オンライン診療受診施設に関する広告」という区分が新設されました。医師がいる医療機関ではなく、患者さんがオンライン診療を受ける場所として提供される施設(法第2条の2第2項)のことです。
この施設の広告も、①誘引性 ②特定性 ③その施設に関する内容であることの3つで判断されます。そして「その施設そのものが医療を提供するものではない点について誤認を与えることのないように明示する必要がある」とされています。
美容・自由診療のオンライン相談を、店舗や個室ブースと組み合わせて展開しようとしている事業者は、ここを先に読んでおいたほうが安全です。
これまでも禁止でしたが、今回は広告の定義(第2の1-1)の中に、自院サイトの体験談は広告に該当する→省令第1条の9第1号で禁止、と続けて書かれています。「うちのサイトは広告じゃないから」という言い分が通らない形になりました。
ガイドライン本体とQ&Aに加えて、実際の画面例で説明する「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」が第6版に更新されています。自院のページを直すときは、本体よりこちらのほうが判断しやすいことが多いです。制作会社に依頼するときは「第6版で見てください」と伝えてください。
ここまで削る話ばかりでしたが、削っただけのページは、当然ながら弱くなります。ルールを守りながら、患者さんが本当に知りたいことは3つあります。どれも「あとから検証できる事実」なので、書いて問題ありません。
「いくらか」より「結局いくらで、何回来るのか」が知りたいのです。
矯正・インプラント・美容施術は、追加費用が読めないことが最大の不安です。幅で示してよいと原文にあるので、隠さず幅で書いてください。
「こういう方にはお勧めしません」「この状態なら、まず別の治療を先にご提案します」。
売らない条件を書いている院は、信用されます。誇大表現をひとつも使わずに差がつく、いちばん強い一手です。
自由診療ではリスクの記載が義務ですが、多くの院は義務だから最小限しか書きません。
そこで「起きたときに、うちは何をするか」まで書くと、同じ義務の欄が信頼の材料に変わります。
例:「腫れは通常◯日で引きます。◯日を超える場合は、追加費用なしで再診いたします」——これは検証可能な自院の方針なので、書けます。
厚生労働省
条文
参考(一次情報ではありません)
1つ目:自院のサイトを開いて、「患者様の声」と「ビフォーアフター」の2か所だけ確認してください。
この2つは、今回の改正で根拠がいちばんはっきり書かれた場所です。今日30分でできます。
2つ目:自由診療のページに、費用の幅・期間・回数・主なリスクが同じ大きさの文字で入っているか見てください。小さい注釈や別ページに逃がしていたら、そこが直す場所です。
読んで直す時間が取れない、制作会社に頼んでいて自分では触れない——という場合は、ページを見て「どこが危ないか」を先にお伝えします。作り直しの提案を先にすることはしません。
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